アクアリウムの水が緑色ににごったり、ガラス面に緑色の膜が付着したりすることがあります。これはコケです。見ばえが悪くなるばかりでなく、魚にとっても不衛生で、悪影響の元となりますので、発生しないように予防し、発生してしまったら適切に対処しましょう。
水を緑色ににごらせるコケ
緑色のヘドロ状や膜状になっているコケは「藍藻(らんそう)」です。別名を「アオコ」、「シアノバクテリア(藍色バクテリア)」ともいい、植物というよりは細菌の一種です。
藍藻は濃い緑色で、成長スピードが速く、放っておくとあっという間に水槽や水草を覆いつくしてしまいます。
繁殖が進むと、
・光をさえぎって水草の光合成をさまたげる
・暗反応の呼吸で酸素を消費し、魚の酸欠をまねく
・ミクロシスチンなどの毒素を生み出す
といった害をもたらします。藍藻の毒素は、魚だけでなく水鳥や家畜、ヒトに対しても発がん性を含む障害を肝臓にあたえます。
水槽のガラス壁にこびりつくコケ
水槽のガラス壁にこびりついて見ばえを悪くするコケは「茶ゴケ」、「珪藻(ケイソウ)」と呼ばれます。水槽の使い始めの時期に、ガラス表面についたよごれをエサにして発生しやすいコケです。しかし、水槽の中にほかの植物があると、しだいにほとんど発生しなくなります。
最初の時期をすぎてから再発生するとすれば、魚のフンから溶け出した物質をエサにした茶ゴケです。茶ゴケは植物プランクトンがいれば抑制されるので、植物プランクトンの光合成をうながすために日光をあてると効果的です。
いろいろな物に付く細長いコケ
細長い糸状になっているコケは「糸状藻(しじょうそう)」です。酢の物にして食べる「モズク」も海産の糸状藻の仲間です。淡水性の糸状藻では、「アオミドロ」が一般にたいへんよく見かけられます。池などを作ると真っ先に繁殖をはじめるのがアオミドロで、ときには魚が泳ぐのがむずかしくなるほど繁茂することがあります。
アクアリウムの水槽内では、水草は言うにおよばず、濾過装置のパイプや空気パイプ、ガラス壁など、あらゆるところにひっつきます。完全に除去しないと再生してしまうのですが、水草にからみつくなどして取りのぞくことがむずかしいことが多くあります。
防止策はむずかしいところです。ほかのコケやバクテリア、カビは「富栄養化」が原因でこれを解決すれば防止できるのですが、糸状藻は水質に問題がなくても発生することがあるのです。そのため、見かけたらすぐに取りのぞくようにするくらいしか対策はありません。
コケの予防方法
上記のように、ひとことで「コケ」と言っても種類があり、対策はひとつでは済みません。ですが、共通する注意点はいくつかありますから、これからご紹介しましょう。
水槽の大きさとの関係で、「魚口密度」が高すぎると、食べ残しのエサやフンの量が増え、影響が強くなります。あまりに数多くの魚を入れず、余裕をもたせておくことが大切です。
3~4センチくらいの小型の熱帯魚だと、「水槽の水2リットルで1匹」が目安になります。群れを作って泳ぐタイプの小型魚なら、1.5リットルで1匹でも大丈夫でしょう。
- エビの要求水量は少なめです。ミナミヌマエビなど小型のエビならば0.1~0.2リットルで1匹、ヤマトヌマエビなど大型のエビの場合でも0.3~0.4リットルで1匹といった目安になります。
中型~大型の熱帯魚などは、体長1センチあたり1リットルと考えます。
直射日光を当てた方が発生しにくくなるコケは「茶ゴケ」や「珪藻」ですが、それはある程度時間が経てば自然と発生しにくくなります。反対に、それ以外のコケは直射日光を当てすぎると繁殖してしまいますので、日光や照明を当てる時間を長くしすぎないように調整する必要があります。
直射日光があたる場所に水槽を置くならば、カーテンなどで遮光できるようにしましょう。人工照明中心で光を当てる場合は、市販のタイマーなどで明滅時間を調節する方法もあります。
藍藻は細胞分裂でも増殖しますが、ときどき精子のような細胞を放って有性生殖もします。そのほかのコケ類も胞子で子孫を残そうとします。水カビも胞子でふえます。
そうしますと、水槽のそうじに使ったブラシやスクレーパー、ヘラなどにも目には見えない精子や胞子が付着していることもあるわけです。胞子は、環境が乾燥すると表皮を固くして内部の活動を休眠させ、長期間水に入らなくても死滅しないでいられます。
ですから、そういった胞子がついたままのブラシなどをそのまま次のそうじに使ってしまうと、水槽の中に胞子をもどしてしまうことになります。
そうならないようにするためには、そうじに使ったブラシやスクレーパーなどの道具は、一回ごとにしっかり洗うようにしましょう。
内部のパイプに水をとおす際に強力な紫外線を当てて殺菌消毒をおこなう「殺菌灯」というツールもあります。これを使うと、ある程度の胞子を殺すことができます。
完全に殺すことはできませんので、効果は限定的です。胞子の絶対的な数は減らせますので、コケ対策のメンテナンスの頻度や負担を減らすことができます。
ショップで安価で売っているイシマキガイを水槽に入れると、ガラス壁についたコケを歯舌でかき取って食べてくれます。2匹もいれば十分にはたらいてくれます。また、前に触れたヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビなどもコケを食べる性質があります。レッドラムズホーンという貝やクーリーローチというドジョウみたいな魚、コリドラスというナマズのような魚は、底砂のエサの食べ残しをかなりよく食べてくれます。
このような、水槽の美観や魚の生態に役立つはたらきをしてくれる生物を「タンクメイト」といいます。勝手に役立ってくれるのがありがたいのですが、彼らも生き物ですから、活躍できる環境をととのえてやるため、気をつかわなければならないところはでてきます。貝とエビは、水中のカルシウムが不足すると長生きできませんので、貝殻を多く含んだ底砂を用いるといいのですが、そうすると水のpH値が高めのアルカリ寄りの水質になりやすく、魚によっては不向きな環境をつくってしまいます。またレッドラムズホーンはそのような水質だと大増殖することがあり、始末に困るかもしれません。
水質の富栄養化を防止することもコケのコントロールに役立ちます。藍藻やアオミドロがとらえる前に栄養分を使い切ってしまうような水中植物を導入してやる方法があります。マツモ、アナカリス、ハイグロフィラ、その他、浮き草などを入れてやります。いずれも成長が速い水草で、すばやく栄養分を取り入れてくれます。「どんどん伸びて困る」という人がいますが、そのくらい伸びるものでないと意味がありません。
コケの問題にかぎらず、アクアリウムの水質の問題はろ過を見直すと改善できることが多いです。一回りパワーが大きい、フィルターも大口径のものにすると、それだけで状況がよくなることもあるのです。また、フィルターの定期的なそうじも忘れないようにしましょう。よごれていても、スポンジの弾力が残っていれば使えます。よく洗って、よくすすいで使いましょう。
水槽メンテナンス・インテリア(大阪)